「それじゃ、先週封切になったハリウッド映画にしよう!」

がそういって、俺を含めた3人の顔を見回した
俺は、わずかながら期待していた気持ちを裏切られてしまったことを知った
そして、目を閉じて、その落胆を包み隠そうと努めるしかなかった

なぜならば、それは、今から3ヶ月前・・・・・


「ねえ、珪くん!珪くん!」
「ん?」

二人で一緒に過ごしていたある休日のことだった
はいつものように俺の家に「勉強」に来ていた
勉強以外のことが目的かっていわれれば・・・・まあそれなりに

でも、もちろん、勉強自体もすることはする
が持ち込むレポートの課題は
俺とは違う大学だから、逆に面白みもあって
俺はその作成作業を手伝ったりするのが好きだ

そのお礼といって、は必ず食事を作ってくれる
正直・・・お世辞にもの料理は「得意分野」ではなかったけれど
それでも、俺たちが過ごす時間とともに少しずつ上達していった

普段から内容の貧しい食生活を送っている俺は
俺のためにが何か作ってくれることも、嬉しかったし
こうして俺の家のキッチンにがいることだけでも満足だった

が作った料理を二人で食って
食器の後片付けは二人でする
そして、食後のモカを落とすのは、俺の担当


「このギャラクシーウォーって映画、すごく面白そうだよ!」

湯が沸いて・・・ドリップを始めた俺にがそう声をかけた
の手には、翌々日が発売日の雑誌があった
それには俺が載っている

俺自身はほとんどというか、全く見ない
だから、別にいらないと、マネージャーに返していた
でも、と付き合うようになって・・・
たまたまスタジオで渡された雑誌をが欲しがった
発売される前の週に手に入る雑誌は
にとっては・・・どうやら大事なものらしい


「ギャラクシーウォー?」
「うん!ハリウッド期待の最新作だって、全世界同時公開の超大作って書いてある〜!」

「・・・直訳すると、銀河戦争か、SFだろうな」
「そうだね、すごいね〜、見たい見たい!」

そういっては・・・文字通り目を輝かせてページに見入っていた
ドリップしたモカのカップを持ってリビングに戻った俺は
ソファーの定位置にちょこんと座っているの横に座った

そして、雑誌ごとを抱えて、ソファーに深く腰掛けさせ肩に腕を回した
は俺の膝の上に雑誌を置いて「見て見て」とせがんだ

雑誌には最新映画情報としていくつもの作品が紹介されていた
もちろん、が面白そうといった映画は、この夏の最大の目玉になりそうなものだった


「夏休みの前に公開されるんだって」
「ん、面白そうだな」

「うん!じゃ、観にいこう、ね?」
「ああ、そうだな・・・
 公開してすぐは混雑してちょっと無理かもしれないけど
 しばらくして落ち着いたら、いくか」

「うんうん、珪くんは人がいっぱいいると困るからね
 それじゃ、少し空いてきた頃に一緒に行こうね、約束だよ〜」
「ん、二人で一緒に行こう、約束だ」




俺は、足取りも重くチケットブースに向かった
すると、ぼんやりしていた俺をよそに
金城が財布を取り出して4枚のチケットを買った


「今日は俺が誘ったから俺が出すよ、遠慮しないでいいから」

そういって白い歯を見せ奴は笑った
俺はすばやい対応のこの男の真意をはかりかねていた

俺が誘った

その言葉にも、俺はイラついた
単純に・・・男として金を出すのが当然と思っているのか
それとも、本当にこの男が一緒に行こうと言い出したのだろうか

いずれにしても、そのままでいいはずは無かった


「おい・・・これ」
「いや、俺が出すから、気にしなくてもいいんだぜ」
「そういうわけにはいかないだろ・・・」

金城は、少し首をかしげると差し出された金を受け取った
二人分の金額、それがどんな意味を持つのか、きっとこの男にはわかるだろう

列を外れ待たせてあるたちの元へ戻る前に
この男にははっきりとわからせておいた方がいい


の分を、君が払う、そういうことか?」
「ああ・・・・そうとってくれていい」
「・・・ふぅん」

綺麗に通った鼻すじ、彫りの深い顔立ち
色黒のその男の口元が・・・少し歪んだ


「まあ、今日は受け取っておくよ」
「・・・・」

今日は?
どうでもいい、二度おまえに会うことは無い


俺と金城は、女たちの元へ戻った
俺たちのやり取りは、にも、吉永という女にも聞こえはしなかっただろう


、さより、おまたせ」
「あ、金城くんありがとう、どうだった、混んでたでしょ?」
「いや、上映時間までまだ間があるから大丈夫みたいだね
 席は真ん中ぐらいを取れた、きっとよく観れるよ」
「それじゃ、私たちの分ね」

金城に差し出されたチケットを前に女たちは金を渡そうとした
奴は、にこやかに首を振る


「今日は俺たちが半分ずつ出すことにしたから、な、葉月くん」
「ああ・・・」

「え、でも、ちゃんと自分で出すよ?」
「いいよ、気にしないで、甘えてくれれば」

も吉永という女も少し顔を見合わせて
結局金城が金を受け取らないことを悟ると、礼を言いチケットを受け取った


大学の中で、はどんな様子ですごしているのか
がなぜ今日この二人を連れてきたのか
俺にはわからないことばかりだった


上映開始時間は午後2時45分
40分も時間が空いている
このままロビーで待とうかどうか、少し相談をして
結果、俺たちはシネマシティーの中のコーヒースタンドへ向かった

本格的なコーヒーを飲めるわけではない
入口で品物を注文して自分で運ぶ
ブレンドが180円、そんな店だった
それでも、コーヒーの香りが店の外からでもわかって
俺は苛立った神経が落ち着いてくれることを願っていた


「映画を出してもらったから、コーヒーは私たちがご馳走するね」
「それなら、俺が一緒に運ぶよ」

すかさず金城がそういった
は・・・・・


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